天板にあるリボンマークって、なんだろう?

木の家具、特にテーブルを見ていると
たまにリボンマークが入っていることありませんか?

これは「千切り(ちぎり)」と言います。

家具木工用事典には、
「木部の接合の際、補強のために埋め込む鼓(つづみ)形の板片。
両端が広く、中がくびれて狭い。【衽】や【乳切木】とも書く」
と記されています。

例えば、こんな感じで割れてしまった箇所は、

割れ部分を樹脂で埋めて、千切りを入れることで
さらなる割れを防ぐ役割を果たしています。

この千切りは、割れではなく傷を隠すために入れています。

もちろん、割れや傷以外で使用されることも。

この照明のどこかに、千切りが入っています。
お分かりになりますか?

答えはここです。
木材を繋ぎ、強度を高める役割を果たしています。

見えない場所に千切りが入っていることもあります。

天板の裏側。
左右の板を繋ぐ役目を果たしています。

こんな感じで使われている千切りですが、
割れや傷に対して使用されている千切りは
総じて色が濃いことにお気づきになりましたか?

そうした部分に使われる千切りには、
広がりの進行を防ぐため、硬い木である必要があります。

その役割に適しているのが
「黒檀(こくたん)」という木です。

私たちの身の回りでは
ピアノの黒鍵や判子として使われています。

名前の通り、黒に近い濃い色合いをしているため、
千切りが濃い色になる、というわけです。

また千切りを見かけるのが、
一枚板に多いわけとしては、
生産方法に違いがあるためです。

通常のテーブルは、何枚かの板を繋ぎ合わせて
一台のテーブルになります。

もし千切りを入れないといけない板があれば
別の板に替えれば済む話ですが、
採るまでに100年以上かかる一枚板はそうはいきません。

なので、千切りは一枚板や一点もののテーブルで
よく見かけるというわけです。

このように、千切りの本来の役割は補強材としてですが、
デザイン性があるので、アクセントにもなります。

現に、この千切りをデザインとして天板に入れてほしい!
という、お話をたまにいただくことがあります。

自然の魅力を活かした人間の知恵として千切りを見ると、
それもまた「味」となるかもしれません。

家具における「曲木」という技術の歴史

皆さんこんにちは。

今回は、家具における「曲木」という技術の歴史について学んでみたいと思います。

「曲木」とは、家具の世界で言えば、主に椅子の木フレームのデザインを形作るのに使われる技術です。
無垢の木材を、高温の蒸気で蒸して塑性を増大させ、そのまま金型にはめて乾燥させることで、望みの曲線を持つ材にしたものを指します。

さて、木を曲げるというのは、いつ頃から行われるようになったのでしょうか。
それは、19世紀の前半頃から、同時期的にヨーロッパの各地で少しづつ行われるようになっていったそうです。

たとえば、1810年には、車大工メリハル・フィンクが薄板を曲げる方法を発明しています。また1826年、イギリスのイザーク・ザーゲントが、板を湯で煮るか蒸すかをして柔らかくし、日陰で乾燥させるという方法をとって成功しています。
もっとも、この場合薄い一枚の板しか曲げられず、材料もトネリコ材に限られていました。
さらに1830年、アメリカのエドワード・レイノルズが、木を曲げる機械を発明します。ただし、この場合もいわゆる「曲木」の観念がまだ徹底していなかったため、単板を曲げる作業を機械に置き換えたに過ぎませんでした。

このように19世紀前半頃に、何人もが同じように機械的に木を曲げる方法を考案しましたが、いずれもレイノルズの方法と大同小異で、根本的にはなんら改良が見られないままに終わってしまっていました。

しかしその頃、現在のドイツの片田舎で、発明家でも技術者でもない一人の職人が、木を曲げることによる技術的・経済的な可能性を求め、その完成に向かってひとり工夫を凝らしていました。
それが現在も「曲木家具の生みの親」との呼び声高い、ミヒャエル・トーネットその人なのです。

・ミヒャエル・トーネット
1796年7月2日~1871年3月3日
家具デザイナー・実業家
曲木技術の発明者・トーネット社の創業者

 

1796年7月2日、現在のドイツのボッパルドに生まれたミヒャエル・トーネットは、貧乏な父と同じなめし革職人になるのを嫌い、木工芸の技術を身につけようと建具屋に弟子入りします。

その後1819年に独立。優れた技術と適正な価格で商売を着実に広げていきましたが、やがて供給が間に合わなくなっていきました。
機械設備を導入する資金の無いトーネットは、あくまで手工業という枠の中で、増産方法を考えなければいけなくなりました。

そこで1830年、トーネットは二枚の薄板を膠で煮て貼り合わせたものから、家具の部品製作を初めて試みます。
そしてそれが発展し、薄板を重ね、椅子の前脚と後脚を引き延ばして背の部分につなぐという、一体化した製作の試みも行いました。
その中で、材料を膠で煮ることにより柔らかさを増して曲げやすくなり、また接着も可能なことも判明していきました。

その後、1842年には主に合板での曲木の特許を取得し、その成型技術をもとに、水蒸気の作用を応用して無垢材を曲げる曲木家具の開発を進めていきます。

こうして、技術の発展と、それに準じて作業の分業化等による効率化を図って生み出されていったのが、以下のようないわゆる「トーネットチェア」と呼ばれる椅子です。

曲木によって描かれる、有機的で美麗な曲線には目を奪われます。
これにさらに、木の温かみや、木目のもつ視覚的な美しさが加わるのは、木材という素材を使用しているからこそのものです。

 

そして現在、曲木の技術は職人によって広く世界に広まりをみせています。
BRUNCHで取り扱っている椅子にも、曲木の技術が使われている椅子が沢山あります。

・CH-0178 ダイニングチェア

 

・CH-0156 ダイニングチェア

 

・CH-0179 ダイニングチェア

分かりやすい物だけでもこんなにありますが、他のほとんどの椅子にも、例えば少し湾曲した背もたれの部分などに、曲木の技術は沢山使われています。

 

今回は、今は広く使われている曲木の技術について学んでみました。
この技術がもしトーネットによって生み出されていなければ、今ある椅子の大半はもしかしたら存在しなかったかもと考えると、とても意義のある発明であったと思います。

皆さんも、お持ちの椅子、これからご購入を考えている椅子があったら、どんなところに曲木の技術が使われているか、見直してみるのも面白いかもしれませんね。

それでは、今回はこんなところで。

 

秘めた力を持つ「バニヤンツリー」

「死ぬまでに見たい 世界の気になる樹木」
の中に、ハワイの“コートハウスのバニヤンツリー”
というのを見つけました。
気になったので、今回は“バニヤンツリー”について調べることにしました。

ベルガルボイジュという菩提樹の仲間。
大きく横に広がった枝から気根という長い根を垂らすのが特徴
この気根の影が丁度良く、人々の憩いの場となり、
涼み場所となっているそうです。
とてもリラックスできそうですよね。

そして、この木根が地面に到達すると新しい幹になり木の成長と手助けするそうです。
これを繰り返しどんどん大きくなると、とても一本の木だとは思えないほどの大きさになり、100メートル四方に伸びている木もあるそうで。
生命力旺盛な木で、長寿や豊饒の象徴。
じつに見てみたい。
リラックスとともに生命の力も分けてもらえそうですね。

ただ少し怖いのは「絞め殺し植物」とも言われており、周りに他の樹木があると絡みついて枯らしてしまうらしいんです。
栄養分を吸い取るとかではなく、生長を支える土台として利用しているだけ。
だけど、相手を枯らしてしまいます。ちょっと怖いような切ないような話ですね。

いろいろ調べてみると古くから慕われている樹で、集会の場所になっていたり、ある神話では「望みを叶える木」と言われていたり。
寺院の周囲に植えられる事も。

カンボジアの遺跡が気根に飲み込まれているのですが、これも寺院の近くに植えられたからなのでしょうかね。

そして私たちの生活にとても密着した要素のある樹木でもあるのです!
材は堅く家具や建材として利用したり、樹皮の繊維は紙やロープに使用されたり、果実はそのまま食べれたりドライフルーツにして食し、さらには樹液からはガムが作られるそうです。
これだけでも十分活用していると思ったんですが、葉や芽すらも救荒植物として使われてるんです。
「あますとこなく」といった言葉がぴったりです。

医療用として用いられるのに、樹皮と葉の芽は止血赤い果実は皮膚や粘膜の炎症止めや痛み止めなどに。
乳液状の樹液は、痛みや打撲傷用の外用薬および歯の鎮痛剤として用いられました。
近年では糖尿病の治療薬となる可能性のあるロイコシアニドが発見されているなど、バニヤンの薬用としての可能性はまだまだ未知数というのです!

はじめは“癒されそう”という軽い気持ちで調べたバニヤンツリー。
樹木がここまで使用されていて、何と言っても医療に活用されているのに感動致しました。
樹の持っている力というのは計り知れないものなんだと改めて思いました。

きっとまだまだ私たちの知らないうちに助けてくれる力をもった樹をいうのはいっぱいなるのでしょう。
これからも一緒に勉強していけたら嬉しいです。

ではまた次回。

木を食べる

年越しも終わり1月も半ばを過ぎようとしていますが、
お正月に蓄積された体重は未だに正常値に戻りません。

食う・寝る・呑むの3動作だけで生活するような数日間でしたので、当然の結果ではあるのですが、なんとかせねばと思っていた時、ダイエットに「木」がいいというちょっと面白そうな話を聞きました。

<木を食べる?>

 

木の家具を売っていますが、食べるという発想は今まで考えたこともありませんでした。
しかし木材は建材はもちろん、紙などの原料としても使え世界的にみると薪などの燃料資源など、本当に様々な利用方法があり、「食用」としての用途があってもおかしくはなさそう。

それも葉や実ではなく、木繊維自体を食べるんだそうです。

木繊維の主な成分としてはセルロースリグニン
この2つは人体が消化酵素を持っていないため、消化ができない。
これまでにも木材を食べ物として利用するという研究はなされていたようですが、その場合「セルロースを分解してブドウ糖にする」ことが前提だったようです。(つまり、どのようにして栄養に変え体内に取り込むか)

しかし、今注目されているのは消化されないならその方がいい!という考え方。
消化されなければ栄養にならない、すなわちダイエットになるという訳です。

 

<セルロースとはなにか?>

 

木材の主成分であるセルロース、ヘミセルロース、リグニンはいずれも高分子集合体で、なかでもセルロースは地球上に最も多く存在する炭水化物です。

樹木では重量の約半分がセルロースだと言われ、年間生産量は約1000億トン以上と推定されます。
生物起源であることから環境への影響も小さく再生可能であり、無限の資源いえるかもしれません。

近年特にこれを利用しようという声が高まっており、その中に「食べる」という選択肢も含まれています。
しかし前述したように人体では消化できないので栄養にならない。
本来の「食べる=栄養を摂る」という考え方からすると、ひとつの壁にぶつかったことになるのでしょうが、これを逆手に取った考えがダイエットに役立つという考え方です。

「食べる、しかし栄養にならない」って痩せたい人からするとすごく理想的な食べ物ですよね。
食べ物が豊富にある現代だから生まれた、とても柔らかい発想だと思います。

<木の食べ方>

 

ではどのようにして食べるのか。
そのまま木にかぶりつく訳ではありません。

スギやヒノキの木材を0.3mm程度の微細な木粉(スーパーウッドパウダー)にしたうえで、煮沸することで滅菌や灰汁抜きをする。
このパウダー状になった木材をパンやケーキなどに練り込んだり、ミンチ肉と混ぜてハンバーグやソーセージなどを実験的に作ったところ、約3割程度まで木粉を混ぜても味や舌触りに影響なく食べられたそうです。

またこの他に、スギやナラの削り屑から出汁をとるなど様々な食べ方があるようです。

 

そのうちスーパーやコンビニなどでも売られる身近な食材として、木が用いられるようになるかもしれません。

古くから私たちと密接に関わり合っている樹木ですが、このように科学の進歩とともに新しい可能性が見いだされるのは非常に興味深いですね。

それでは、また次回の木と学ぶをお楽しみに。

南国と言えばヤシの木

ここ数日は寒い日が続いていますね。
暖かかった時期が恋しくなります。
芸能人の方々がハワイでお正月を過ごしたくなる気持ちも分かります。

そしてハワイのような南国で木と言えば、ヤシの木。

こういった光景が簡単に目に浮かびます。
このヤシはココヤシという種類ですが、当然ながら種類によって同じヤシ科でも見た目や性質は変わってきます。

例えば日本でもよく見かけるのがシュロ。

photo by Fanghong

最初の写真のココヤシは、ハワイのような暖かな地方で無いと育つことはありませんが、こちらのシュロならば日本でも平気で育ちます。
場合によっては、北海道でも育っている場合があるとか。
日本に自生するヤシの中でもっとも耐寒性も強いですが、耐火性、耐潮性も持ち、様々な場所で育ち、なおかつ成長が遅く管理が楽ということで、装飾用の植物として育てるのに向いているようです。

なお、日本でよく見かける南国風植物にはソテツもあります。

photo by Hansueli Krapf CC 表示-継承 3.0

だいたい同じに見えますが、ヤシとソテツは別の種類の木。
被子植物なのか裸子植物なのかといった時点ですでに違っています。

ソテツもそこそこ寒さに強く、日本のあちこちで栽培されているようですが、本州中部あたりでも冬は寒すぎるようで、「菰掛け(こもかけ)」と呼ぶワラで全体を覆う作業を行う場合もあるようです。
それを行うとソテツ感、南国感は全く無くなってしまいますが、オブジェのようで面白いので、宜しければ検索してみてください。blogに貼り付けられる写真は見つかりませんでした。

ヤシの話に戻りますが、この木は捨てるところが無い実用価値の高い木でもあり、南国では貴重な資源としても活躍しています。

家具屋としてはヤシの木材を使用した家具が木になるところですが、そこまで多く流通している訳では無さそうです。木材については家具というよりも、建材や雑貨などで使われる事の方が多いようですね。

これがヤシの木の木目です。
色濃く、力強い木目ですが、しっかりと南国感も出ていますね。
BRUNCHで取り扱う木の中では、やはり南国生まれのモンキーポッドが多少近い雰囲気を持っているでしょうか。
https://www.brunchone.com/search/plank/

日本では馴染みの無い木材であるため、なぜ家具としてあまり家具用材として使われ無いのかも分かりませんでしたが、ヤシの木の家具ははっきりとヤシの木らしさが出ていて、南国の家庭にはしっくり来る雰囲気です。
ハワイに行く事があれば、ヤシ家具を一目見て見たいです。

ということで、今回は寒さを忘れるために南国の木・ヤシを調べてみました。
それでは、また次回の木と学ぶをお待ち下さい。

目黒の木『椎』

皆様明けましておめでとうございます。
目黒、千葉船橋、横浜港北で無垢材家具を中心に取り扱っております、インテリアショップBRUNCHです。
本年もどうぞ宜しくお願い致します。

BRUNCHスタッフの勉強ブログ「木と学ぶ」、今年最初のテーマは『椎の木』です。
椎は常日頃からお世話になっているこの目黒区のシンボルとなっている木。(私も最近初めて知りました!)
これは触れずにいるわけにはいかない!と思い立ち、あまり詳しく知らなかった椎の木について調べてみました。

まずは椎の木の特徴をご紹介します。
椎とは、ブナ科のシイとよばれる常緑高木の総称です。関東以西の比較的暖かい地方に自生しています。
葉は堅い楕円形で、表面はつやがあり、裏面に褐色毛があります。
初夏に開花し、その実はどんぐりになります。

今でこそあまり食べるイメージの無いどんぐりですが、実は縄文時代から人々にとって重要な食料として親しまれていました。
今でも一部の地域では炒った椎の実が縁日などで売られているそうです。
子供の頃、どんぐりを題材にした絵本がありました。そこに描かれていた「どんぐりまんじゅう」というお菓子の作り方を見て、近所からどんぐりを拾ってきて作ったことがあります。何がいけなかったのか全く美味しくはできず、悲しい思いをした記憶がありますが、いつの日かリベンジしたいものです。

椎の木材は建材・家具材などに利用されるほか、椎茸栽培用の「榾木(ほだ木)」(天然の木を用い木材腐朽菌のきのこを栽培する原木栽培に用いられる一定の長さに切断した切り株)としても使われています。
BRUNCHで取り扱っている家具の中には同じブナ科の木でビーチ材が使われているものがあります。
比較的通直な木目、肌目が密な点は共通した特徴と言えますね。

<ビーチ材>

<椎材>

大きいものは25mにも達する大木となるそうです。
大木は樹冠が丸く傘状になるのが特徴です。

目黒区の公園樹や庭木の中で最も多い樹木なので、お近くにお住まいの方は意識せずとも日ごろから目にしている機会の多い、馴染みの木といえるでしょう。
目黒の街づくりを見守ってきた椎の木。
目黒をお散歩される際には、ぜひ注目してみてくださいね。