オリンピックと日本の材木

7月下旬からスタートした東京2020オリンピック。
今回は無観客という事もあり、テレビの前で毎日の熱い戦いを応援された方も多いと思います。
様々な問題はありつつも、56年ぶりの自国開催という事で大いに盛り上がりました。

今回のオリンピックで新競技やメダルが期待される選手たちに注目が集まりましたが、東京五輪のひとつの目玉だったのが選手たちが活躍する「競技場」です。

特に今回は木の国日本を全世界に発信する目的もあり、全国各地のさまざまな木材がふんだんに使用されました。
国を挙げての一大プロジェクトを彩った競技場たち、意外と知られていいないことも多いみたいです。

 

木材使用量 堂々の第一位は!?

①有明体操競技場
木材使用量(材積):約2,600㎥

東京五輪で最も木材が使用されたのは、なんと有明の体操競技場!
個人的には何かと話題になっていた国立競技場が第一位かと思っていたので意外な結果でした。
ここでは施設名の通り、オリンピックの体操競技が行われ、パラリンピックではボッチャという球技が行われる予定です。
そんな有明体操競技場の中でも最も木材が使われたのが全長約90mのアーチ状の木造屋根。
屋根の主な材木は北海道産、長野産のカラマツ集成材、目を惹く外装には秋田県、静岡県、鳥取県、徳島県、高知県、佐賀県、宮崎県産の杉材が使用されました。
また観客席にもふんだんに杉材が使用されています。
これは五輪終了後、学校の下駄箱などに再利用が検討されているそうです。
ここにも日本の「もったいない精神」が垣間見えてとても良いですね。

 

木材使用量 第二位は杜のスタジアム

②国立競技場
木材使用量(材積):約2,000㎥

第二位は隈研吾氏のデザインでも話題になった国立競技場!
所在地である神宮外苑の森との調和をコンセプトに2016年12月から工事が始まり、3年後の2019年12月に施設の開会式が行われました。

国立競技場の特徴はなんといっても外装の綿密に配置された軒庇(のきびさし)。
これには全国47都道府県から集められた木材が方位ごとに配置され、この素晴らしいデザインの大きなポイントとなっています。
また木材+鉄骨をハイブリッドさせた構造材を使用した大屋根トラスは選手、観客席のどの位置からも木材の温かみを感じられるとても日本らしい造り。
そして残念ながら今回の2020五輪では無観客開催となってしまいましたが、観客席を5色のアースカラーで塗り分けることで、木の木漏れ日のような演出効果をもたらすと共に空席が目立たず今回のオリンピックためにあったようなアイデアだと話題にもなりましたね。

 

木材使用量 第三位は各国の選手たちのための施設

撮影:Tokyo2020 / Shugo TATEMI 2020年8月時点 / 内装整備前 / 新建築2021 5月号

③選手村ビレッジプラザ
木材使用量(材積):約1,300㎥

第三位には各国の選手たちが生活を共にする選手村の、代表的な施設がランクイン。
高さ6mの平屋建てで3本の柱をツイストさせたような構造にすることで、間仕切り壁を必要とせず、開放感と温かみのある空間になっています。
こちらは全国63自治体より木材を借り受け、大会終了後は解体し各自治体に返納され、公共施設などの材として利用される予定です。
一般の人は入れない場所ですが、解体される前に一度は中に入ってみたいですね。

 

オリンピックを終えて

いかがだったでしょうか。
この他にも五輪関連でたくさんの建物が建てられ、中にはそのまま今後も残るもの、解体されてしまうものとありますが、何かしらの形で日本のどこかでレガシーとして残っていくようです。

いろいろあった2020東京オリンピックでしたが、終わってみれば過去最多のメダル獲得という事で期間中は熱狂の日々でした。
選手たちへの感謝とともに、この五輪をサポートしてくれた競技場が今後どのように残っていくのか、ちょっと気にしてみると面白いかもしれません。