木と湿気の関係

梅雨のジメジメした空気が気を重くさせる季節。
農作物や植物にとっては大切な期間だとは理解しつつ、どんよりとした空模様に引きずられ気分も落ち込みがちになりますね。
また、湿度が高いと食べ物も傷みやすくなります。
ちょっと油断していたら食材が腐っていた…なんてことも起こりうる時期です。

さて、皆様ご存じの通り、木も腐ってしまう事があります。
木が腐る原因は『木材腐朽菌』という菌。
この菌が木材を分解する酵素類を分泌し、木材の組織を破壊してしまうことで、木は腐ります。
木材腐朽菌は高い湿度を好み、木が湿った状態で乾かずにいる時に最も活発になります。
ご家庭のリビングや寝室でこの菌が繁殖し、家具が腐ってしまうということは滅多に起きないと思いますが、バスルームやキッチンなどの湿気が多い空間に木の家具や建具などがある場合は少し注意した方が良いでしょう。

木の種類によって、この腐朽菌に対する抵抗力も異なります。
ヒノキ、ケヤキ、ヤマザクラ、クリなどといった腐朽菌に対抗するための強力な耐腐朽菌物質(ポリフェノールやタンニンなど)を多く含む木は一般的に腐りにくいと言われています。
が、例え同じ一本の木であったとしても、その部位によって腐りやすさは異なります。

こちらの写真を見ると分かるように、木の多くは中心付近の色が濃い『赤身』と呼ばれる心材と、外周部の色が明るい部分『白太(しらた)』と呼ばれる辺材に分けられます。
『赤身』には様々な樹脂成分など、腐朽菌が嫌がる防腐成分が多く含まれています。
対して『白太』はまだ樹脂成分が溜まっていない若い細胞の部分。
水分も多く通す部位のため、『赤身』よりも腐朽菌の影響を受けやすいのです。
先ほど挙げた「腐りにくい」といわれる木も、部位によってはすぐに腐ってしまうため、水回りや建築の土台は赤身の材のみで作られることも多いのだとか。

腐るとまではいかずとも、湿気は木の家具にも大きな影響を与えます。
木には調湿作用があり、周囲が乾燥している時には自身に蓄えている水分を放出し、逆に湿度が高い時には余分な湿気を吸収してくれます。
木は伐採された後も生きているので、家具に加工されてからもその作用は無くなりません。
無垢材家具は天然の加湿器と言っても良いでしょう。
ただ、木には水分を放出しすぎて乾燥すると縮み、湿気を蓄えると膨らむという性質があり、これが木の家具の割れ反りの原因になります。


(↑以前展示していた、中央部分が少し垂れるように沿ってしまったテーブル)

そこで、やはり秋口~冬の乾燥する季節は、木の家具を置いているお部屋では加湿器をお使いいただく事をおすすめします。
また、エアコンの風が直接当たると乾燥の原因となりますので、湿度の高い夏であっても注意が必要です。

木も人間と同じく、湿度の影響を強く受けます。
今の季節はあまり関係ないかもしれませんが、秋冬の乾燥を感じる時期には、ご自宅の家具にも少しだけ気を配ってあげて下さいね。