ラビットチェア~デザイナーSANAAについて

みなさん、こんにちは。
目黒通り、千葉、横浜に展開する無垢材家具のインテリアショップBRUNCHです。

目黒通りの新ビルbrunch+oneがオープンしてからもうすぐ3ヶ月。

brunch+oneではこちらのチェアがお客様をお出迎え致します。

うさぎの耳をかたどったかのようなデザインが印象的で可愛らしい、通称「ラビットチェア」。

素材は白くて透明感のあるビーチ材とスチールパイプの組み合わせ。
座面部分には成形合板を使用しており、うさぎの耳のような背もたれが優しく背中にフィットします。

耳のかたちはよく見ると、左右非対称。そしてアーム部分も左右非対称となっています。フリーハンドで描いたような左右非対称の曲線をデザインとして落とし込んだ興味深いプロダクト。

そして素材の特性を活かした曲線が美しいチェアです。


CH-0016 アームチェア


CH-0017 アームレスチェア

このチェア、BRUNCH以外でもご覧になったことのある方は多いと思います。
一番有名なのが、金沢21世紀美術館での展示ではないでしょうか。

金沢21世紀美術館にずらりと並ぶ「ラビットチェア」をデザインしたのは、「日本一の美術館」と謳われるこの美術館の設計も手掛けた建築家ユニット、SANAA(サナア)です。

今回はそんなSANAAについてのお話し。

SANAAは、1995年に設立された妹島和世と西沢立衛による日本の建築家ユニット。
2度の日本建築学会賞受賞や、建築界のノーベル賞といわれるプリツカー賞を受賞するなど、これまで見たことがないような自由な発想の美しい建築物を多数生み出し、世界的に高く評価されています。

きっとみなさんも知らず知らずのうちにSANAAの手掛けた建物をご覧になっていると思います!

例えば都内だとこちら。


ディオール表参道

どうでしょう。表参道を訪れたことのある方なら、一度は目にしているのではないでしょうか。

SANAAがユニットとして、そして妹島氏、西沢氏それぞれが個人として設計した有名な建築物は世界中に点在し、すべての作品を見るとなるととても大変ですが、私が実際に足を運んだなかで一番のお気に入りは、前述の金沢21世紀美術館です。

2004年にオープンした金沢21世紀美術館の設計を担当したSANAAは、その年のヴェネツィア・ビエンナーレで国際建築展の金獅子賞を受賞。(100年以上の歴史を持つ世界最大級の美術展での最高賞です!)

格式ばっていて敷居が高いと思われがちなそれまでの美術館のイメージを覆す「ひらけた雰囲気の美術館」を建築物として作り上げたことで、建築・アート界隈に衝撃を与え旋風を巻き起こしました。

この設計を機にSANAAは美術館作りの名手として世界中で活躍しています。いまでは一般層にもその名が広まったと言えるのではないのでしょうか。

「まちに開かれた公園のような美術館」をコンセプトにした金沢21世紀美術館は、全面ガラス張りの円形の建物でどの方角からやってきた人も入りやすいように4か所の入口が設けられています。

美術館の周りの敷地は芝生で覆われ、周辺を囲う物はなにもなく歩道と地続き。ところどころに設置されたユニークな屋外展示作品も相まって、本当に公園の一角にいるようなほのぼのとした雰囲気です。

そして誰もが気兼ねなく立ち寄れるこのオープンさは、どの方向から見てもキラキラと美しく輝き、中を見通せるガラス張りの建物ならではでしょう。人々が自然と美術館の中に吸い込まれていくようです。

美術館の「中」に入ってみると、内部の作品展示室以外はほとんどがガラス、透明の壁になっていて、太陽の光が差し込み、展示作品と鑑賞者たちの動きが交差した美しい空間が広がります。

円形の建物の中に多数配された中庭や白い立方体の展示室が、さながら迷路のように入り組み、常設展示も含めてさまざまな作品を道順関係なく楽しめるつくりとなっています。

集中してじっくりと作品の鑑賞もできるし、外を見渡せる透明な壁沿いの空間でゆっくりと休んだりもできる。展覧会を見に来ているということも忘れそうなほど、美術館での時間を緩急をつけながら自由に楽しめます。

美術館の中を、外を、好きなように歩きまわるだけで「多方向性=開かれた円形デザイン」「透明性=出会いと開放感の演出」といった設計にあたり用いられたテーマと、SANAAが生み出す建築物の魅力を存分に体感することができます。

そして夜になると自然豊かな金沢らしい静かな暗闇の中、美術館内の灯りが外へと光を放ち、昼とはまた違う美しい表情の外観を見せてくれます。

なお、金沢21世紀美術館に展示されているSANAAの作品としては、最初にご紹介した「ラビットチェア」の他に、マイケル・リンによる加賀友禅に着想を得た花模様が壁を埋め尽くす恒久展示作品「市民ギャラリー」の前に並ぶ、ロッキングチェアがあります。

チェアに施された柄はマイケル・リン、チェアのデザインはSANAAが手掛けた両者のコラボレーション作品です。

いまでは人気の観光名所となった金沢21世紀美術館。
話題の常設展示作品や企画展の面白さもさることながら、SANAA建築の素晴らしさと美しさもぜひ味わっていただきたいです。

*金沢21世紀美術館 Website

 

そして、もうひとつ。
SANAAの設計とは知らずにたまたま立ち寄ったことがある、軽井沢千住博美術館も非常に美しい建築です。

こちらの外観は円形ではありません。しかし中に足を踏み入れた瞬間、どこか金沢21世紀美術館を想起させるつくりにすぐピンときたことを覚えています。

たくさんの植物が植えられた不定形の中庭をガラス壁が囲み、そこから自然光がたっぷりと差し込んで、やわらかく透明感の溢れる空間が広がります。

こちらはユニットとしてではなく、SANAAの西沢氏個人による設計です。
千住氏本人からのリクエストもあり「明るく開放的」な美術館を目指したそう。

この美術館の特徴は、建物が立っている土地の起伏をそのまま生かした、ゆるやかに傾斜している床の設計です。
アスファルトで覆われた道や屋内の平らな床とは異なり、まるで自然の中、土の上を歩いているような感覚で展示を見た記憶があります。

なだらかに起伏する床の形状は視覚的効果が高いデザインとして、建物全体を不思議な雰囲気で包み込んでいました。

*他の写真は軽井沢千住博美術館 Websiteでご覧下さい

そして軽井沢千住博美術館と同様の「床が傾斜した美術館」は、SANAAとしても設計しています。

それが広く話題を集めたフランス ルーヴル美術館の別館「ルーブル・ランス」です。

現地の広大な風景に溶け込むアルミとガラスを多用したSANAA設計の美術館、ルーブル・ランス…いつか絶対行ってみたいと思っています。

ほかには、ベネッセアートサイト直島にあるSANAA西沢氏が設計に関わった豊島美術館や、都内ではSANAA妹島氏が手掛け昨年オープンしたすみだ北斎美術館なども注目です。

個人的にはSANAA建築の魅力はただひたすらにその存在自体が美しく、そしてさまざまな事柄の間に潜む壁を取り払ったと思しき自由な発想。その点に尽きると思っています。

(最近発売されたこちらの雑誌にもSANAA特集が!目を奪われる美しい写真がたくさん)

SANAA設計による美術館や興味深い建築物はまだまだありますが、今回はこのあたりで。

すこしでも興味を持たれた方は、まずBRUNCHで実際に「ラビットチェア」をご覧いただければと思います!

それではまた。