家具の歴史を少し覗いてみましょう

皆様こんにちは。無垢材家具のBRUNCHです。
桜の季節が終わりを迎え、少しずつ新緑が綺麗な季節になってきました。
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ゆったりとした時間の中で、何も考えずに過ごすひと時は何とも言えない贅沢ですね。
さて、今回の木と学ぶでは「時間」をテーマに木について学んでみたいと思います。
■家具のはじまりは?
現存する最古の家具は古代エジプトの椅子(玉座)やチェストで、なんと3300年前とされています。想像もつかないくらいの時間を経て、なお現存するとはただただ驚くばかりです。残念ながらその写真は掲載できませんが、現在はエジプト考古学博物館に収蔵されているそうで、一度は見てみたいですね。
ちなみに無垢材の家具について調べていると、木の膨張や収縮、それに伴う割れや反りといった木の性質にいきあたります。現代では科学的にいろいろと研究がされていますが、古代エジプトにおいてもそれらの木の性質を理解した上で、家具が製作されていたようです。
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木の家具を作るにあたり、もっとも注意する点は含水率ですが、現代ではこのように機械を使って含水率を測ります。古代エジプトではどういった方法を用いていたのかは不明ですが、含水率を測定する技能を有していたと言われています。すごい文明ですね。
ちなみに最古の家具が形を保ったまま出土された理由のひとつとして、エジプトという乾燥する場所にあったからということが非常に大きな要因と言われています。やはり木の家具は乾燥の状態がもっとも大切だと再認識させられます。
ところで形はというと、椅子にしてもテーブルにしても、実は最古の家具と現代の家具に大きな違いはありません。
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たとえばテーブルは板に四本の脚、そして貫きと呼ばれる補強材が入ったシンプルなデザインです。時代がどれだけ変わっても、基本的な構造が変わらないということは、使い方・使う対象(私たち人間)に変化がないからということでしょうか。それにしても古代エジプトの文明には驚かされることばかりですね。
■生まれ変わる家具
続いてはBRUNCHで取り扱っている家具についてです。
「長持(ながもち)」という家具をご存知でしょうか?
長持とは、昭和時代、特に初期に広く使用されていた和櫃(わびつ)の一種で、衣類や蒲団、調度品等を入れておく長方形をした蓋(ふた)付きの大きな箱を指します。明治末年までは花嫁が輿入れする際の必需品だったそうで、両端にある金具に棹(さお)を通して二人で担ぎ運搬もしていたそうです。
私も実際に長持そのままの状態を見たことはないのですが、実はBRUNCHにも姿を変えた長持があります。
それがこちら。
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長持を使った一人掛けのソファです。
長持だった頃の痕跡がいたるところに残っています。
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金具の少し上に横に入った線が見えると思います。
線より上が蓋です。
この両側に付いた金具を上に上げ、棹を通すことで二人で担いで運搬していました。
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こんな感じです。
移動することを考えているので、木材の中では軽量の桐材を使用しています。
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背面には蓋の持ち手と鍵の痕跡があります。
ちなみに長持は当初、底に車輪を付けた「車長持」が主流でした。
そのまま引っ張って持ち運べるため人気を博しましたが、江戸大火の際に皆が一斉に車長持を持って逃げたため路地がふさがれ大惨事となってしまったそうです。そこで幕府は江戸・大坂・京都の三都で車長持を禁止し、その後上記の棹を通して持ち運ぶ長持が普及したそうです。
昭和末期に普及した箪笥にも長持同様に棹を通して運べる構造が取り入れられていたため、箪笥を数える単位は、1棹、2棹・・・となっています。
長持以外にもこんなものもあります。
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刀箪笥にスチールの脚をつけたコンソールです。
長持も刀箪笥も今でこそ馴染みがありませんが、少し前の日本では日常的に使われていた家具です。
それが姿を変え、また新しい家具へと生まれ変わることを考えると、歴史の一部にふれているような感覚になります。
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こちらはチークの古材を使用したテーブルです。
耐水・防虫・防腐性に優れたチーク材は、古くから寺院や船などに使われてきました。
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時間が経つにつれ耐久性を増すチーク古材を利用したこれらの家具は、釘の跡や傷さえも表情の一部となる魅力があります。
主に海外で使用されてきたであろうチークが古材となり、今は日本でテーブルとなり私たちの日常を楽しく幸せな時間にしてくれています。
今私たちが使っている家具も、後々にはこのように姿を変えて、また次の時代で愛されているのかもと思うと、木の家具はまさに一生モノだと感じることができますね。
どうぞ家具選びの際は、デザインや機能性だけではなく、その木が過ごしてきた時間や背景を想像する楽しみも加えていただければと思います。
それではまた次回。