適材適所。針葉樹が快適さを守ります。

こんにちは。

2017年の初旬から強烈な寒波が列島を覆い、特に西日本で大雪の被害が出ている模様です。

BRUNCH各店がある関東の平野部では積雪はないものの、非常に寒い毎日ですが、みなさま体調など崩してはおりませんでしょうか。インフルエンザも流行の兆しをみせていますので、体調管理などに気をつけて元気に過ごしていきたいものです。

さて、BRUNCHでは無垢の木の家具を中心に取り扱っておりますが、今までの「木と学ぶ」でもふれている通り、家具の材料になる樹木は、広葉樹が一般的です。広葉樹の細胞組成の特性上、ねばりや堅牢さが広角的多方向に強靭な性能を発揮するので、様々なデザインでたくさんの椅子やテーブルが作られてきました。

CH-0208チェア

 

それでは、日本の森林の大きな割合を占める針葉樹はどのような場面で使われているのでしょう。

戦後、日本が復興していく上で非常に重要な要素であった建材を得るために針葉樹の植林が盛んに行われました。すなわち、針葉樹は柱や壁といった木造建築の主要な材料として重宝されていたのです。木造建築以外の建築方法が台頭してきた現代では、戦後ほどの需要があるわけではないのですが、多くは針葉樹で造られている、ある特定のモノも存在します。

それは、建具(たてぐ)です。

針葉樹は比較的木目が通直で細い細工に適しているのが建具に良く使われている理由のひとつです。軽く、丈夫で加工性がよく、木口方向(木目の方向)にとても強い性質があります。障子や襖といったものを作るのにとても向いていて、山で多く採れるということもその理由になったようです。

「軽い目隠しと通風を備えた格子戸」

 

建具とは、建具屋さんという職業があるとおり、その技能はとても専門的で、非常に高度な技術を要します。


「明かりを取り込みつつ、外部との隔たりを作る障子」

それは家などの建築物という「枠」に「合わせて作る」ためで、形やサイズがそのまま機能となることが多いのと、気温や風雨、音など、生活する上で快適さに直結するような性能を求められるという特性が関係しています。

「重いガラスを嵌め込んだモダンな戸もできます」

建具に使われている主な樹種をご紹介していきましょう。

まずはこちら。

杉(スギ)です。

国産の針葉樹と言えば、まず最初に思い出されるくらい有名な杉ですが、建具の材料としてもよく使われます。軽くて軟らかい木です。

その木質は、暖かい時期に育った年輪である早材(春材)と、寒い時期に育った晩材(秋材)の硬さが大きく違い、それをあえて生かす技法の「うずくり仕上げ」という木目の凹凸面をつくる仕上げが有名です。トクサなどの硬い植物の茎などで擦り上げ、軟らかい早材の部分を削り落とし、硬い晩材部分を強調します。

「うずくり仕上げ」

 

檜(ヒノキ)

檜風呂というイメージがありますが、建具の材料としても非常に人気があります。早材、晩材ともに緻密、均質で、仕上がり、加工性に優れ、ホゾなどで組んだときの仕口の強度も十分です。中心に近い心材は耐久性、耐朽性に富み、内部、および外部どちらの建具にも向いています。上品な色と美しい木肌が好まれ、建具材として安定した人気があります。

 


「耐朽性十分で独特な芳香が好まれる檜」

檜は、白木色仕上げという、鉋(カンナ)で削ったままの質感を残しながら汚れ止めの塗装を施したものが最も代表的な仕上げ方法となります。

「白木色仕上げ」

 

外国産の針葉樹からはこちら。

スプルース

ホームセンターなどでよく見るツーバイ材と呼ばれるSPF材。Spruce(スプルース: えぞ松)、Pine(パイン: 松)、Fir(ファー: もみ)の頭文字をとってSPF、ということをご存知でしたでしょうか。私は初めてそれを知ったときは衝撃を受けたものでした。

その一角を担うスプルースは、木理は通直、木肌は密で、軽く軟らかいために加工性がいいのでとても人気があります。軟らかいものの繊維は強いので、剥がれるような裂け方をします。DIYで経験のある方もいるのではないでしょうか。

戦後、欧米から輸入されたフラッシュ構造の技術は、合板などを使い大量生産され、反りや狂いが出にくく、なによりそのコストの安さに瞬く間に伝統的な建具と取って代わっていきました。さらにその後アルミサッシの登場により、気密性や施工性が飛躍的に上がり、私たちの住環境は快適に変化していきました。

「腰付障子」

その技術の向上は否定できるものではないのですが、「大切な何か」を置き忘れてしまっている、と、近年はアルミサッシにも引けを取らない性能を持った木製の建具も再注目されてきています。

個人的には、いつか家を建てるようなことがあれば、木製の建具で建てたいな、とそんなことを考えてしまいました。