花粉のあれこれ

日に日に暖かくなってくるこの時期。
目黒川の桜も満開を迎え、まさに春本番ですね。


【目黒川】

お天気も良く絶好のお花見日和!と言いたいところですが、多くの人にとってそうとも言えない要因があります。
そう、花粉症です。
かくいう私も子供の頃から花粉症に苦しめられてきました。
気持ちの良い季節なだけに、余計に恨めしいですね。


【スギ花粉】

さて、そんな花粉症を引き起こす草木といえば、代表的なのがご存知スギです。
そして同時期飛散するヒノキの花粉も、スギ花粉と抗原の共通性があるため、スギ花粉症の原因となります。
地方により時期は異なりますが、関東ではこの二種類だけでも2月頭~4月末頃まで飛散しています。


【ヒノキ】

アレルギー反応を起こすケースが今の時期程ではない為あまり注目されていませんが、花粉は季節を問わず一年中飛んでいます。
現在までに約60種の花粉アレルギーが報告されており、そのうち花粉症は約50種
ほとんどは農家の方が受粉作業などを行う際の特殊なケースだそうですが、その種類の多さには驚きです。

一般的なケースですと、樹木の花粉ではシラカンバ、ハンノキ、ケヤキ、コナラ、クヌギなどがあげられます。
そして5~6月にはイネ科の花粉、7月は比較的少ないですが、8月下旬~9月にはキク科のブタクサ、ヨモギ、アサ科のカナムグラなど…アレルギーを起こす花粉だけでもこれほど種類があるのです。


【シラカンバ】


【ケヤキ】


【ブタクサ】

多くの花粉症患者にとって悩ましいこの季節。
ですが沖縄では、それほどスギ・ヒノキを原因とする花粉症に悩む人は多くないのだそうです。
その理由は大きく分けて二つ挙げられます。

まず第一の理由は、スギ・ヒノキの数が本州に比べ圧倒的に少ないこと。

東京都が森林面積の約40%がスギ・ヒノキなのに対し、沖縄県におけるスギ・ヒノキの占める森林面積は約0.03%しかありません。

なぜこれほどまでに差があるのか。その理由は、戦後の時期までさかのぼります。

日本では戦後間もない時期(1950年頃)から、治水や環境保全のため、そして戦後復興に必要な資源を育成するため、国を挙げて一斉に植林が始まりました。

その際、国の政策により植えられたのがスギを中心とした針葉樹だったのです。
スギが選ばれた理由は、当時植林用の苗木として確保しやすかったこと、スギは成長が早い上、真直ぐに伸び、材質が柔らかく、しかも軽いことから木材として適しており、生産性が高いと考えられたからです。

しかしその頃、沖縄県はアメリカに統治されていました。
日本政府がスギの植林を進めていた時代は、植林の対象外であったために、沖縄ではスギやヒノキがほとんど植えられなかったのです。

それに加え、細く高く伸びる特性を持つスギの木は、毎年多くの台風が通過する沖縄では大きく成長しづらいというのも、スギが広まらなかった要因の一つといえます。


【スギ】

そして第二の理由は、花粉を飛ばすための条件となる『休眠打破』が、沖縄の気候においては起きにくい事。

休眠とは、植物の成長が停止する期間のことを言い、種子や芽の休眠がよく知られています。
多くの植物種が、冬季や乾季などの生育に適さない気候を生き抜くための戦略として、休眠を用いています。
スギも例外ではなく、夏に雄花の花芽が出来たのち、秋に休眠します。
休眠状態から目覚める(打破する)条件として、ある程度の期間、冬の低温にさらされる必要があるのですが、沖縄は冬も本州に比べ気温が高いため、この条件を満たさないケースが多いのです。
休眠打破をしないと、開花できず、花粉も飛ぶことはありません。
ちなみに沖縄でソメイヨシノが開花しないのも、この休眠打破が起こらないためとされています。


【ソメイヨシノ】

以上のような理由から、沖縄ではスギ花粉症の症状が出にくい、と言われています。
もちろん季節が違えば別の花粉によって症状が出ることもあるそうですが、それでもこの季節をマスク無しで快適に過ごせるというのは羨ましい限り!
症状が重くて耐えられない!という方は、思い切って沖縄旅行を計画してみるのも良いのではないでしょうか。

それでは今週はこの辺で。
次回の木と学ぶもお楽しみに!