虫の寄る木々

夏も盛り、梅雨が明けたような日が続いていますが梅雨明けは来週のようです。

先日、出勤のため公園のそばを歩いていると、虫取り網とカゴを抱えた子供たちがせっせと虫を追いかけていました。
小さい頃はよくカブトムシやクワガタを採りに行ったものです。

無垢材家具をあつかう我々の中で虫は嫌われ者ですが、今日は逆に、そんな虫たちが好む木々にスポットをあててみたいと思います。

<虫が好む木>

虫が好むといっても人間と一緒で千差万別ですので、今回はカブトムシやクワガタといった男子が好きな夏の虫についてご紹介します。

まず虫が好む木とは『樹液』が豊富な木であることが大事です。
多くの虫たちはこの樹液を求めて寄りつきますので、昆虫採取をするなら樹液が染み出ている木を探すのが近道と言えるでしょう。

■クヌギ

ブナ科コナラ属の落葉高木で、虫の寄る木といえばクヌギと言うほど夏の虫たちにとってはオアシスのような存在。
樹液が豊富であることはもちろん、若葉を主食にする者や材自体を食べる者もいるため、多くの昆虫採集家はこの木があると立ち止まり、幹、枝、葉から根元までじっくりと観察し虫を探すそうです。
またオオクワガタなどが活動拠点としてクヌギを選ぶ場合が多いため、名産地などでは一部のマニアが何時間もクヌギの木を見張っている光景もみられるとか。
秋には大きく丸みのあるドングリが実る。

 

■コナラ

同じくブナ科コナラ属に属する広葉樹でシイタケの原木などにも使われる。
こちらも足しげく通われる夏の虫が多くいる人気樹です。中には『樹液飲むならやっぱりコナラだろう、クヌギなんかはミーハーが寄るところだよ』なんて方もいらっしゃるようで、通が好む木なのかもしれませんね。
上のクヌギと同じく秋にはドングリが実り、昔は食用としても重宝されていました。ちなみにクヌギのドングリは渋みが強くそのままでは食用には向きません。やはりコナラは通好みの木なのかも。

 

■ハルニレ

ニレ科ニレ属の落葉広葉樹で世界に3種の例外を除き、春に花を咲かせることからハルニレと呼ばれる。日本には秋に花が咲く珍しい品種であるアキニレという種も分布している。
地域によっては大繁盛らしく、例によって樹液を豊富に提供してくれます。
日本各地に分布するので、朝早く起きて虫取りに行った思い出の木はハルニレかもしれません。

<人気の理由>

虫たちに人気のトップ3をご紹介しましたが、その理由はやはり『樹液』です。
しかしそんなに都合よくいつでも樹液が湧き出ているのでしょうか。
ここに自然界の面白い役割分担がありますので、ご説明します。

樹液は常に流れ出ている訳ではありません。
何者かが木の表面にキズをつけたところから流れ出てその匂いにつられて虫たちが寄ってくるのですが、この何者かとはやっぱり虫なのです。

これまではシロスジカミキリという虫が産卵のために樹皮にキズをつけ、そのキズから樹液が染み出てくると言われていました。
しかし、近年の研究ではボクトウガという虫の幼虫が材に穴をあけ、その穴の出入り口周辺を常に加工し続けることで永続的に樹液を提供していると言われているようです。
そしてその樹液に集まってくるアブやガ、ダニなどを捕食している事が明らかになりました。
※諸説あります。

意外かもしれませんが、ほとんどの大きな虫たちは自分でキズをつけて樹液を飲んでいるわけではなく、この小さな虫たちの恩恵にあずかっているんですね。

捕食される側としてはまさにハニートラップでたまったもんじゃないでしょうけど、カブトムシなどの昆虫たちにとってはなくてはならない存在なんですね。

<意外と身近なカブトムシが好む木>

シマトネリコという木があります。
日本では沖縄諸島など温かい気候に分布する樹木で、低気温以外に気を遣う必要がないため近年では関東でも観葉植物や庭の木として人気です。

そして一部の虫取り少年たちには朗報なんですが、近年このシマトネリコにカブトムシが大量発生するという事態が度々起こっているそうです。

なぜか。

今では純粋なものが非常に貴重とされている、沖縄原産のオキナワカブトという昆虫がこれに深く関わっているとされています。
前述したようにカブトムシは自力で樹液を吸う訳ではなく、染み出ている蜜を吸いに寄ってくるのですが、オキナワカブトは自分の顎で樹皮を削り、蜜を飲むのです。そのオキナワカブトが好んで寄るのがシマトネリコなんですね。

この習性は本来本州のカブトムシにはないものでしたが、雑交種なのか近年では本州のカブトムシにもこの習性がみられ、観葉植物として植えられたシマトネリコの皮をかじって樹液を吸うカブトムシが見られるようになっているようです。
※諸説あります。

 

私が子供の頃には虫取り名人みたいなおじさんが各地域にひとりはいて、夏になるとごっそりカブトムシを捕ってきてくれました。
そしてそれぞれバナナがいいとか桃がいいとか、独自の収集方法を持っていたように思います。

今年の夏、カブトムシやクワガタを探しに行かれる方がいれば、この記事を参考にまずは木々を観察してみて下さい。
木を追えばきっと目当ての虫たちに出会えると思います。
それではまた。